あなたはなぜ「禁煙」できないのか
そのため、「強権的に受動喫煙防止対策を強化するのは乱暴だ」という意見にも耳を傾ける必要があります。ちなみに、女性の平均喫煙率は6.9%であり、喫煙率の低下には女性の喫煙率の低さが影響している、という側面もあります。
これまで何回かタバコ問題や受動喫煙防止について記事を書いてきました。今回は、喫煙者がタバコをやめられないのはなぜか、考えてみたいと思います。
なぜ禁煙に失敗してしまうのか
喫煙をやめたいと考えている喫煙者は30%から70%いると考えられていますが、禁煙の方法や身近な禁煙治療機関の有無がわからない喫煙者も多いです。禁煙外来などで治療を受ける喫煙者もまだ少なく、せっかく禁煙治療を受けても禁煙に成功する患者は半数に満たない状況です。
禁煙外来にかかって禁煙に挑戦したものの、途中で挫折してしまう患者の理由は多種多様です。薬の力を借りても禁煙できないという喫煙者もおり、複雑な事情からタバコをやめることの難しさがわかります。
-
禁煙治療をあきらめた:喫煙してしまい、自分は禁煙できないと思い込んでしまった。「禁煙治療をしなければ」という気持ちがストレスになった、など。
-
禁煙がうまくいかなかった:薬剤による効果が感じられず、禁煙意欲も失せたため。喫煙が続いており、医師から治療終了を告げられた、など。
-
精神疾患等の悪化:精神科で治療を受けている患者はなかなか禁煙できない。ニコチン離脱症状を強く訴えるケース(うつ症状の悪化)など。
-
喫煙してしまい、通院しにくくなった:処方を受けても禁煙できず、通院しづらくなった。禁煙できない自己嫌悪感が強くなり、通院を中断してしまった、など。
-
禁煙補助剤の副作用:バレニクリン(ニコチンを含まない代替薬、副作用が指摘されている)内服で嘔気が出現し、気分が悪くなった(バレニクリンは2025年8月8日現在出荷停止中)。ニコチンパッチで皮膚炎が強く出たケース、など。
-
その他:喫煙本数を減らせて満足してしまった、など。
タバコを吸うことをやめられない人は、基本的にニコチン依存症という病気にかかっています。そのため、禁煙外来での治療や禁煙治療薬などで、このニコチン中毒という症状を緩和すれば、タバコをやめられる可能性があります。
しかし、前述したように禁煙治療後に再び喫煙してしまう患者も多く、長期的に禁煙を続けるためには心理的なサポートやカウンセリングが必要です。禁煙治療では、患者自身の精神的・心理的な特性に応じたアプローチが重要になります。
また、治療全般に言えることですが、患者が受診や医師の指示に従い続けることが難しい場合もあります。さらに、受療行動から脱落した患者に対する介入が行われていないことも多いです。
タバコをやめるために必要なこと
つまり、禁煙を希望する人には以下のような複合的な支援が必要になります。
-
医療者からの反復的な働きかけ
-
社会環境による喫煙に対する規制強化
-
禁煙外来などでの薬物療法
-
再喫煙防止と長期フォロー
-
パンフレットや教材などによる情報提供
オタワ憲章(1986年)によれば、ヘルスプロモーションとは「人びとが自らの健康をコントロールし、改善することができるようにするプロセス」とされています。また、行動変容とは、医師や医療関係者が患者の行動を変えるのではなく、患者自らの考えによって自分の行動が「変容」することです。
禁煙サポートの有無によって、禁煙の成功率は変わります。また、喫煙者が禁煙しようとする行動は、喫煙者自身の強い「行動変容」への意欲、そして家族や社会など周囲の環境要因に大きく影響されます。
喫煙のような生活習慣を変えるためには、禁煙治療を含む喫煙者個々人へのアプローチと同時に、「社会通念」による影響や家族・仲間など周囲の環境からの働きかけが重要です。この二つが個人の喫煙習慣を変え、さらに両者は相互に作用し、社会全体の構成員の生活習慣にも影響を与えると考えられるのです。
すでに登録済みの方は こちら